私は、ハゼノキにとても弱い。
ウルシ科であるハゼノキを切り、その切り粉が肌に触れようものなら、次の日から赤いぶつぶつと、地獄のような痒みが約1ヶ月は続くのだ。
地獄というからには本当に地獄で、寝る前や風呂上がり、日中など、体温が上がる要因が揃った瞬間、痒みでのたうち回る。
被れた箇所をハサミで切り取ってしまおうかと思うほどだ。
だから極力ハゼノキには触れたくないのだが、奴らは実生でよく増える。
その上、道の端やコンクリートの壁の隙間など、陽の当たるところならどこにでも生えるため、よく撤去を頼まれる。
撤去の時は、いつもの手袋の下に更にゴム手袋をはめ、服の袖を手袋の中へ入れ込み、首元へタオルを巻き、完全防備で臨まなければならない。
これだけの手間でその後1ヶ月を平穏に過ごせるならば、安いものだ。
ハゼノキは、素人が安易に手を出して良いものではない。
ハゼノキでもこんなに被れるのだから、ウルシではもっと被れるに違いない。
これ以上の痒みなど、自殺した方がマシなのでは?という考えが浮かんでしまいそうだ。
幸いまだウルシを切ったことはないため定かではないが、できれば一生手をかけずに済ませたいものである。
さて、そんなハゼノキでもいい所はある。
まず、紅葉がとても美しいことだ。
ウルシ科の樹木は、秋になるとその葉を真っ赤に染める。
紅葉する樹木というのは他にも沢山あるが、大体赤にオレンジや黄などが混ざる。
そのグラデーションも美しいのだが、ハゼノキの葉は赤1色である。単色というのも、実に風情があるものだ。
次に、実から蝋(ロウ)が取れることである。
江戸時代などはロウソクが高級品だった為、ハゼノキもそれはそれは重宝されたものであろう。
外灯などもなく、夜に出歩くことが難しかった人々の、夜更かしのためには欠かせない存在なのである。
しかし、現代には電気がある。ロウソクなどはケーキの飾りとか、葬式くらいしか使い道がない。
ハゼノキの役目は、紅葉が癒しになる事以外は、もうほぼ終わってしまったのかもしれない。
せめて被れることさえ無ければなぁ…と私は今日もポツポツと赤くなった腕を掻きむしりながら思うのである。
fuuka