さて、以前イヌマキを紹介した際、コウヤマキもいつか紹介したいと書いた。
今日はそのマキの王であるコウヤマキについて書くことにする。
イヌマキ編で書いたとおり、コウヤマキは材木としてとても優れている。
大昔から風呂桶や橋など、柔らかく水に強い性質を活かした使い方をされてきた。
樹皮を砕いて繊維状にしたものは、水漏れ防止のパッキングとしても活躍していたようだ。
イヌマキとナギはマキ科の植物であるが、このコウヤマキは独立してコウヤマキ科の植物である。
コウヤマキ科というのはこの1属1種しかなく、高野の一匹狼といったところだろうか。
マキの王には相応しい肩書きと言える。
また、コウヤマキは秋篠宮悠仁様のお印であることも知られている。
「大きくまっすぐに育ってほしい」とのご両親の想いからコウヤマキを選ばれたそうだが、確かに成長したコウヤマキというのは、それはそれは見事にまっすぐ伸びた大木となる。
その美しさは、世界三大美樹として数えられるほどだ。日本だけではない、世界である。
しなやかで細い葉を枝先につけている様子は、まるで王の冠ではないか。
一見尖っていそうなその葉先は実は丸みを帯びており、触っても痛くない。
これは小さい子どもがいるご家庭でも安心できる要素である。
しかもこのコウヤマキ、なんと松ぼっくりをつけるのだ。
しかしマツではないので、マキぼっくりといったところか。
大抵の子どもは松ぼっくりやドングリを好むと思うので、やはりご家庭にオススメなのである。(まあ、少し値は張るが…)
日本の王族をも認めさせ、世界三大美樹とされるようなワールドレベルの貫禄をもつ樹木、それがコウヤマキという唯一無二の存在なのだ。
これと比べられたイヌマキには非情なことであるが、相手が悪かったとしか言いようがない。
しかし庭木として植えられる数は圧倒的にイヌマキの方が多いので、どうかこれからも堂々と胸を張って生きていってもらいたい。
fuuka
私は、数ある花の香りの中で、ウメの香りが1番好きかもしれない。気品があり、なんだかホッとする。ウメの香りと共にお茶を飲みたいものだ。
だから私は、冬の終わり頃が好きだ。良い香りがフワッと漂う。
完全な春は、気候が良すぎるせいか、なんだかぼーっとしたり、体調を崩すことが多いのであまり好きとは言えない。しかし、この冬と春の境目の季節は好きだ。(ちなみに、1番好きなのは秋である。)
ウメは紅いものも白いものも美しいが、たまに紅白両方の花を1本の木に咲かせるものがある。
それが、画像のような「源平咲き」である。本当に美しくて可愛らしいと思う。
これは、接ぎ木をした訳でも品種改良をした訳でもなく、たまたまこのような咲き方になったのだ。
このウメは元々は紅い花のみを咲かせるウメだったのだが、紅い色素を作る器官が何かの弾みでエラーを起こしたため、白い花が混じってしまったのである。
このような源平咲きや、八重咲きのような美しい咲き方をする花には、大体突然変異やエラーが付き物である。
人類も、いつか突然変異した個体が現れるかもしれない。それを現代の人間が受け入れられるのかは分からないが、私は単純に興味があるため、その瞬間に立ち会ってみたいと思う。
ところで、私は子どもの頃、梅干しが大好きだった。
今は嫌いではないのだが、半年に1度おにぎりに入っているものを食べれば良い方である。思えば、子どもの頃一生分を食べたのだろう。
小学3年の正月、お年玉を貰った私は物産館へ行き、1粒300円もする南高梅の6粒入りを買った。つまり、1,800円である。
小学生にとっては大金だが、その額も惜しくないほど、梅干しが好きだったのだ。
お年玉で梅干しを買う子どもなど、私以外に聞いたことがない。
子どもは味覚が鋭いと聞くが、当時の私は梅干しを酸っぱいとは感じなかった。レモン等も同様に、普通に食べていた。
大人になった今、レモンを料理にかけることはあるものの、そのままとなると酸っぱくて食べられたものではない。
「わかもと」という名の整腸剤があり、それを祖父がよく飲んでいたのだが、私はこれをラムネのごとくボリボリかじり、食べていた。今となっては、あんな苦いものを何故そんなに好んで食べていたのかが分からない。
果たして、本当に子どもは味覚が鋭いのだろうか。実は、まだ発達の途中で、逆に大人より鈍いのではないのか。
涼しい顔をしてレモンをかじる娘を見て、最近疑問を抱いている。
fuuka
我が家のベランダには、夜になるとムクドリが羽を休めに来る。
フンの被害が尋常ではないので正直やめて欲しいのだが、こんな時代である。他に安心して休める場所がないのであろう。
我が家が安息の地に選ばれたことを誇らしく思いつつ、フンの掃除をしようとベランダに出た。
すると、星のような形をした種がフンに混じって落ちていた。
この形の種をもつ樹木を、私は知っている。が、なかなかに思い出せない。
少し考え、そういえば近所の荒地に1本、大きなセンダンが生えていることを思い出した。
そうそう、これはセンダンの種だ。
きっとムクドリたちは、あれを食べたに違いない。
センダンというのは、5〜6月頃に白や薄紫のように見える小さな花をたくさん咲かせる樹木である。その様子はとても可愛らしい。
そして秋から冬にかけて、綺麗な黄色の実を、これまたたくさんつける。
この黄色が、秋晴れの青空とよくマッチし、なかなかに写真映えするのである。
この黄色の実、鳥たちはとても美味しそうに食べているが、人や家畜が食べると数粒で死に至る。
確実に種を遠くに運んでくれそうな生き物を選んでいるというわけだ。
確信犯である。なんとも思慮深い。
私の1歳半の娘も、センダンの実で遊んでいてかじってしまいそうになったことがある。
とても美味しそうに見えるため、その気持ちはよく分かる。
しかし、センダンには毒があるということを私は知っていたため、娘が実を手に持った瞬間から注意深く見ていた。転がしたり投げたりして遊ぶ分には全然いいのだ。口に入れようとしたら止めるだけだ。
このように、植物の知識があるというのは時に大事な人の命を守る。
まあ基本外にあるものを口に入れようとは思わないだろうが、万が一の時に慌てなくて済むのは良いことだ。
カネノナルキ編では私と娘がうっかりその葉を食べてしまったが、毒性がないと知っていたからこそ慌てずに済んだのだ。
ムダだと思っていた知識は、母親になったことで少なからず役に立ったのだった。
話を冒頭に戻すが、やはりベランダのフンは病気などが気になるので、ムクドリたちには申し訳ないが、ぜひ他を当たってもらいたいものだ。
fuuka
前回のユキヤナギ編では、少しバラ科の特徴について触れた。
今回は、その補足をしようと思う。
バラ科の花は、花びらが全部で5枚あり、中心に沢山の雄しべをつける。
これは、バラ科全てに共通することだ。
しかし、バラを思い浮かべ疑問に思った方もいるであろう。
え、バラって、花びらたくさんあるじゃないか。
その通りである。
よく見かけるバラには花びらがたくさんある。
これはどういう事かというと、かつて、全てのバラは花びらが5枚だった。
しかしある日、何らかの原因により雄しべが上手く作られず、穴埋めとして本来雄しべになるはずの部分を花びらに変化させた個体が現れた。
これが八重咲きの始まりである。
(ちなみに、花びらも雄しべも雌しべも、元は葉から派生したものだ。)
突然変異で現れたその個体があまりに美しかったため、当時の人間はなんとか同じものを作りたいと考えた。
しかし、雄しべがないということは種を作ることができない。
そのため、なんとかその個体から株分けや接ぎ木を繰り返し、増やしていったのである。
つまり、バラ科で八重咲きのものは品種改良されたものだ。
起源を辿ると、原種は必ず5枚の花びらで構成されている。
原種に近づくほど、繁殖能力は高くなる。
桃とか梨とかアーモンドとか、バラ科には果樹も多く含まれ、大変お世話になっている。
これも先人たちが美味しく食べられるように品種改良を重ね、後世に残してくれたものである。
バラ科食品をいただく時は、先人に感謝の思いを馳せてみてもいいかもしれない。
fuuka
八代市で雪が積もることは滅多にないが、春になるとまるで雪景色かと思うような光景が見られることがある。
それは、このユキヤナギが花を咲かせた時である。
真っ白で小さな花が長い枝の先までびっしりと咲き誇るため、遠くから見ると本当にそこだけ雪が積もっているようだ。
ユキヤナギはバラ科の樹木である。
バラ科にはサクラやウメやイチゴ等があるが、共通の特徴としては、5枚の花びらがそれぞれ1枚ずつ独立して付いていることである。
そのため花が散る時は1枚1枚ひらひらと飛んでゆく。ユキヤナギの花が散る時、その周辺には雪が降るのだ。
花が散ったあとは、ヤナギのようにしなやかで細めの葉が残る。
これが、ユキヤナギと呼ばれる所以であるが、私はヤナギと聞くと真っ先に妖怪やお化けを思い浮かべてしまう。
しかし妖怪やお化けとは全く正反対の、明るく可愛らしいイメージの植物であるため、ガーデニング等には最適だ。丈夫で、病気にもなりにくい。
擬人化するのであれば、清楚で上品なお嬢さんといったところか。
しかし、芯の強さも持ち合わせている。
こんな子が庭先に立っていてくれたら、最高ではないか。
似たような樹木としてコデマリやシジミバナといったものがあるが、コデマリは鞠のように丸く花が集まって咲いているし、シジミバナは原種では見分けが難しいが、日本に流通しているほとんどのものは品種改良済みの八重咲きなので、ひと目で分かる。
よく見れば見分けは簡単につくので、是非観察してみて欲しい。
fuuka
マンサクといえば、冬に全ての葉を落とす落葉樹で、1月〜2月頃に黄色い花を咲かせる植物のことである。
対して、トキワマンサクは「常磐」と名のある通り、1年を通して葉がついている常緑樹であり、3月~5月頃まで花を咲かせる。
この2種類の樹木、性質は違うが花の形が非常によく似ている。
糸状で、花火のような花がポンポンとたくさん咲く。
たくさん咲くから、「万咲く」というふうに名前が付けられるのは、植物ではおなじみの話だ。
会社内のものは写真の通り白花のトキワマンサクであるが、実は私は白花のものは八代に来て初めて見た。
よく見かけるのは、ベニバナトキワマンサクという、画像2枚目のように花がピンクで葉が赤紫をしているものだ。
こちらは庭の生垣に使われていることが多いので、よく見かけることができるポピュラーなものだ。
ちなみに、白花のトキワマンサクとは別にシロバナマンサクという園芸品種もあるようだが、こちらは落葉樹でトイレブラシのような花が咲く。
先程の花火とはえらい違いである。
トキワマンサクは葉が剛毛なところに愛嬌があるため、1度じっくり観察してみることをオススメする。
fuuka
あなたには、自分の持っていた固定概念が崩れた瞬間があるだろうか。
私にはある。
ナギというとても美しい葉を持つ樹木がある。
私の地元山口県では、自生しているナギは天然記念物になっており、少し珍しい樹木だ。寺や神社等によく植えられている。
このナギ、一見すると常緑広葉樹である。
葉っぱの幅が広いものは、大体広葉樹であろう。
…と思っていた
しかし、実はこのナギ、針葉樹なのである。
これには驚いた。葉の幅が広い=広葉樹という概念が崩れた。
確かに、葉をよく見ると葉脈が真っ直ぐに伸びており、破ってみると縦にピリピリと裂ける。なるほどこれは、広葉樹では見られない特徴だ。
さらに私を驚かせたのは、ナギはマキ科の植物だということだ。
マキといえば、前回紹介したあのイヌマキの事だ。
あれの仲間とは、なんとも興味深い。
私は自分の思い込みの中で植物の分類を無意識に行っていたのだ。
ナギは幸せの木とも言うらしいが、私の間違った概念を世に晒し、恥をかく前に正せたというのは、この上ない幸運であったと言えよう。
fuuka
名前に「イヌ」がつく植物というのはたくさんあるが、これは「本来の物より劣っているもの」という意味がある。
イヌマキは、恐らくコウヤマキと比べられ、それより劣っていると判断されたのだろう。
コウヤマキはたしかに美しい。水にも強く腐りにくく、材木として優秀だ。いつか詳しく紹介したい。
だが、一般に「マキ」と言うと、このイヌマキの事を指し、庭木で最もよく見かける樹木のひとつである。
他のものと比べる必要なんてなく、イヌマキそのものが立派な庭木ではないか。
イヌマキには、オスとメスがある。
オスは対して褒められるところはないが、メスは秋頃に赤紫と緑の雪だるまのような実をつける。
緑の部分には毒性があるのだが、赤紫の部分は食べられる。ほんのり甘くて美味しいのだ。
この部分は「花托」と呼ばれ、血の巡りを良くしてくれる効果もあるらしい。
私が高校生のころ、校庭に実っていたイヌマキの実をよく食べていた。
とても食い意地の張った友人がおり、その友人と共に部活中抜け出しては食べに行っていた。
私が通っていたのは造園科のある高校だった為、色んな種類の樹木が敷地内に植えてあった。
食べられる実をつけるものは、私と友人で食い尽くした。
先生達は呆れていた。
しかし、思えばこの頃が一番樹木に対する知識量が増えていた時期だったかもしれない。
イヌマキの実が食べられるということも高校の先生に教えてもらって知ったことだ。
食べるという行動が、覚えるということに繋がっていたのだ。
イヌマキは、このように今でも私の青春時代の思い出の一部となっている。
fuuka
今熊本県では、各地でソメイヨシノが満開となり、見頃を迎えている。
ソメイヨシノというのは、数あるサクラの種類の中で1番有名なアレのことだ。
私の地元山口県では、たしか毎年4月に入ってから見頃を迎えていたはずだが、さすが暖かい地方はソメイヨシノの開花も早い。
とはいえ、過去からの統計を見てみると、現代では全国的にソメイヨシノの開花が早くなっている。温暖化により、冬から春にかけて急速に暖かくなることが原因だろう。
この辺りの開花条件について詳しいことは、「ソメイヨシノ 400℃の法則」とGoogleさんに聞けば教えてくれるので、ぜひそちらに聞いて欲しい。
ソメイヨシノは暖かくなると花を咲かせ、散ったあとに葉を出し、夏にはもう新しい花芽を作り来春に備える。
この一連の大仕事を終えたあと眠りにつくのである。
そして、冬に一定期間3℃~10℃程の低温にさらされることで、「しまった寝過ごした」とばかりに目を覚まし、開花の準備をする。
つまり、寒くならなければソメイヨシノは目を覚ますことができず、花を咲かせることも無いということだ。なんとも繊細な樹木である。
さて、添付されている画像を2枚とも、よく見てほしい。
ソメイヨシノと同じ色をしたネコがこちらを睨んでいるのだが、お分かり頂けただろうか。
このネコが睨む先には、我が社の看板犬、シェルティのこまがいる。
このネコは、野良であるのにも関わらず、とても人懐っこい性格のようだ。
低木の影から私を見つけ、にゃーにゃーと何やら喋りながらこちらに歩いてきた。
しかし、私のすぐ側には、こまがいた。
こまは低木の影におり、ネコからは見えなかったようだ。
初めに気がついたのは、こまの方だった。
こまは微動だにせず、ネコをじっと見つめている。
ネコの方もこまに気がついた。
こちらも歩みを止め、こまをじっと見た。
2匹は数秒そのまま見つめあっていたが、ネコがふと我に返り、逃げ出した。
こまもそれを追おうとするが、私がリードを持っていたため叶わず、悔しそうな顔をした。
ネコは咄嗟にソメイヨシノの木に登ったようだ。地面から3m程の場所から、こまのことをずっと睨んでいた。
木から降りられなくなったネコの話をたまに聞くが、このネコは大丈夫だろうか。
少し心配になったが、私達がこのままここに居てもますますネコは降りてこられないだろう。
そう思ったので、こまを連れてとりあえずその場を離れた。
あのネコには悪いことをしてしまった。
しばらくしたらまた様子を見に行ってみようと思う。
fuuka
(P.S 次の日の朝またネコを確認しに行ったが、無事に木から降りられたようだ。
本当に悪い事をした。こまが。)
さて、今日紹介するのはマツである。
庭師が剪定しているもののイメージで、まず大半の人が一番最初に思い浮かべるのがこのマツであろう。
造園会社のホームページというものは日本に山ほど溢れているが、大抵、マツを切っている画像が使われている。
我が社も例外ではない。
いつの時代も、庭師はマツを切り続ける。それ故に、庭師とマツは切っても切れない関係にあるのだ。
さて、マツは非常に病害虫が多い。
立ち枯れ病、マツケムシ、材線虫、葉ふるい病(葉枯れ病)etc…..
特に、葉ふるい病はご家庭でよく見られる。
原因は、カビによる伝染病であり、葉の1本1本に斑点模様が現れ、そこから枯れが広がってゆく。
見つけたら、すぐにその部分を切って、焼却処分をした方が良い。
燃やさなければ、菌糸が残り、他のマツにも影響を与えかねないからである。
マツケムシは、私の父がよく刺され、痒い痒いと言っていた。
私は幸いマツケムシに強いらしく、痒みを感じたことは無い。
自分は痒くないとなると、途端に可愛く見えるものである。
マツの剪定は時間がかかるが、とても楽しいものである。
マツがあると、ヤッター!となる庭師は多い。
ぜひ、マツがお庭にある方は手入れを大里造園に依頼して欲しい。
fuuka