名前に「イヌ」がつく植物というのはたくさんあるが、これは「本来の物より劣っているもの」という意味がある。
イヌマキは、恐らくコウヤマキと比べられ、それより劣っていると判断されたのだろう。
コウヤマキはたしかに美しい。水にも強く腐りにくく、材木として優秀だ。いつか詳しく紹介したい。
だが、一般に「マキ」と言うと、このイヌマキの事を指し、庭木で最もよく見かける樹木のひとつである。
他のものと比べる必要なんてなく、イヌマキそのものが立派な庭木ではないか。
イヌマキには、オスとメスがある。
オスは対して褒められるところはないが、メスは秋頃に赤紫と緑の雪だるまのような実をつける。
緑の部分には毒性があるのだが、赤紫の部分は食べられる。ほんのり甘くて美味しいのだ。
この部分は「花托」と呼ばれ、血の巡りを良くしてくれる効果もあるらしい。
私が高校生のころ、校庭に実っていたイヌマキの実をよく食べていた。
とても食い意地の張った友人がおり、その友人と共に部活中抜け出しては食べに行っていた。
私が通っていたのは造園科のある高校だった為、色んな種類の樹木が敷地内に植えてあった。
食べられる実をつけるものは、私と友人で食い尽くした。
先生達は呆れていた。
しかし、思えばこの頃が一番樹木に対する知識量が増えていた時期だったかもしれない。
イヌマキの実が食べられるということも高校の先生に教えてもらって知ったことだ。
食べるという行動が、覚えるということに繋がっていたのだ。
イヌマキは、このように今でも私の青春時代の思い出の一部となっている。
fuuka